『TIME is LOVE』
「うっそ!!!!!」

ヒロユキはハンドルを掴んで叫んだ

目の前の時計は2:30PMを回った所で…

そのまま、自分の腕時計に目を移せば4:00PM少し前だ

「マジかよ」

ヒロユキが二度寝から飛び起き腕時計を見るとすでにスタジオへの入り時間だった

必死に言い訳を考えながら運転し、ダイスケのスタジオに着いてから車内の時計を確認する

「うっそ!!!!!」

なんて事はない

腕時計が狂っていたのだ

「まだ1時間半もあるじゃん…どうする?自分」

狭い車の中にヒロユキの呟きが響く

これから映画を見るには中途半端だし

飲みに行くにはまだ日が高い

洒落たカフェに行っても長くは保たない気がする

買い物する意欲もあまり沸いては来ない

悩んだ挙句

結局はダイスケに電話しようと決めた

「寝てるかな〜」

呼び出しのコールが続く

あと一回で留守電に切り替わってしまうとヒロユキが携帯を耳から離そうとした時

『…はい、もしもし』

掠れた声が聞こえる

寝起きのようでまだ覚醒してはいない

「あ、大ちゃん?…寝てたんだ、ごめんね」

『ううん、大丈夫だよ。早いね…どうしたの?』

「うんとね・・・そうだ、早く家を出られそうだから大ちゃん家に迎えに行こうかな〜って思ったから・・・」

我ながらナイスな言い訳を思いついたものだとヒロユキはほくそ笑む

『・・・・』

電話の向こうが妙に静かだ

「大ちゃん?」

『ヒロ、本当の事言いなよ。遅刻しそうになって飛び出したらまだ早かったって』

「見抜かれてるんだ」

『やっぱし・・・クックック』

受話器の向こうのダイスケの肩がきっと震えてるんだろうと思うとヒロユキは悔しかった

『あっはっは、お腹痛い・・あっはっは・・・で、今何処にいるの?』

「・・・スタジオ」

『えっ?』

「だから、大ちゃんのスタジオの駐車場だよ」

誰もいないスタジオに用はないだろうとヒロユキはぶっきらぼうに苦々しく零した

『偶然。ボクも今、スタジオの上の部屋にいるんだよ』

「えぇ????何で???あ・・・・また徹夜したね」

『まぁね。じゃあさ、今、ロック解除するから上がっておいでよ』

「わかった」

自宅がちゃんとあってもダイスケはよくスタジオにある部屋で泊まったりする

一人暮らしだからドコで寝泊りしても良い様なモノだが自分のベッドが一番心地良いヒロユキには信じられない事だった



カチャリ



冷たく重いドアを開けて一階の事務所を抜け二階のスタジオも抜けプライベートな三階への階段を上がった

いままでも少し空き時間があるとココへ来てお茶を飲んだりしていた

但し・・・スタッフは誰も入った事がなくヒロユキだけが踏み込める聖域でもあるのだが



二度チャイムを鳴らすとカチリと言う音と共にダイスケが鍵を開けてくれた

「おはよう」

ヒロユキのドジぶりが可笑しいのか顔を見るだけで微笑が沸いてくるようだ

「ごめんね・・・・まだ寝てていい時間なのに。腕時計が狂っててさ・・・」

「大丈夫だよ。そろそろ、起きようかなと思ってからさ。まぁね、ちょっとだけ早いかな」

「マジでごめん」

リビングへの廊下を謝りながらヒロユキはダイスケの後を歩く

起きたての身体を包んでいるのは彼にしては珍しいスウェットだったりする

「あ・・それ?」

それ・・・オレのだよねと言いかけてヒロユキは止めた

カッコイイとは言い難い、少し大きめなそれを着てくれるダイスケが愛しい

「何か飲む?」

甲斐甲斐しくキッチンへと足を向けたダイスケをヒロユキは制した

「大丈夫。それよかもっと寝ても良いよ。オレはそこいらへんに居るからさ」

一時間半あればまだ惰眠を貪れる

「ベッドから出てしまったら、もう寝られないよ」

ヒロユキが無造作に脱いでソファに乗っていた上着をダイスケはそっとハンガーに通してコート掛けに吊るした

「じゃあ、シャワー浴びてくるから好きな事してて良いよ」

「うん。・・・あっ、この前話していたDVD観て良いかな?貸して貰う手間省けるじゃん」

そうだね。と言いながらダイスケが手際良くラックから一枚のDVDを取り出してデッキにセットした

読み込みが表示されてからすぐにプレイボタンを押すと洋画の映画会社のクレジットが始まる

画面を見つめるヒロユキへ視線を送りながらダイスケはバスルームへと向かった

「これ・・これ・・」

途中までは内容も記憶に残っている

しかし、夕べは寝付くのが遅く寝起きも最悪だった事もあり、いつしか映画のトーンの暗さが眠りを誘ってしまった

「・・・大ちゃん・・・まだ、シャワー浴び・・・て・・・る・・・」





「それ、面白い?」

濡れた髪をタオルで拭きながらダイスケはTV画面の前に座るヒロユキに声をかけた

「ヒロ??」

前に回ってヒロユキの瞳が閉じているのを確認する

ダイスケはフーーっと息を吐き出す

「ヒロの暇潰しって、やっぱり眠る事なんじゃない??」

デッキを止め、画面を消してダイスケはヒロユキの隣に座った

「もう・・・いきなり来てすぐに寝ちゃうなんて。・・・ヒロらしいって言えばそうだけど」

湿った髪をヒロユキの肩に乗せて軽く笑ってみた

ヒロユキの身体がゆっくり傾きダイスケの膝の上に倒れこんだ

「ヒロ・・・?起きてるの?」

問いかけても返って来るのは静かな寝息だ

「あ・・・よほど急いで来たんだね、耳の後ろ髪が跳ねてるよ」

クルンと跳ねた一房の髪をダイスケはそっと撫で付ける

何度、やってもソレはクルンと跳ね返りその度にダイスケは白く細い指で撫でつけた

「ヒロ」

ダイスケは身体を前倒しになりながらヒロユキの唇に唇を重ねた

軽く触れるだけで離すつもりの口づけが濃厚になる

「ん・・・」

ヒロユキが起きていた事をダイスケは知った

「ん・・・。もう、イジワルしないでよ、ヒロ。いつから起きてたの?」

「大ちゃんが隣に座った時から」

見下ろすヒロユキの瞳が少し細められダイスケを見つめている

「ヒロの顔好き」

「顔だけ?」

「スタイルも声も好き」

「スタイルと声だけ?」

ヒロユキはダイスケの手を握り唇に押し当てた

ダイスケの体温が僅かに上がる

もう、片方の手がバスローブのはだけた部分から中へ差し込まれる

「ちょ、ヒロ?」

風呂上りの湿った肌の感触が心地良い

「ダメだってば、せっかく綺麗にしたのに」

「オレとエッチな事する為に綺麗にしたんでしょ?」

くぐもった指がダイスケの敏感な部分に辿り着いた

「下・・・着けてないんだ・・・・やっぱり、何か期待してたんでしょ?」

「違う。脱衣場に持って行くの忘れただけだもん・・やぁ・・・だ」

ヒロユキは身体を起こしダイスケを正面から抱きしめた

何度もキスをしてバスローブを肩から滑らし胸の突起を唇で愛撫する

「ヒロ・・・時間ないよ・・・遅れちゃうよ」

上擦った声でヒロユキの愛撫を制すダイスケの声にも余裕は無い

「スタジオの上に居るんだから大丈夫だってば。遅れたっていいじゃん」

「でも・・・でも・・・」



ピンポン!



けたたましい玄関のチャイムが鳴り響いた

「誰だろう・・・?ねぇ?ヒロ?」

胸から下腹部へと愛撫をやめないヒロユキは気にも留めないようだ

「ほっときなよ・・・それよりさ・・・ベッド行こう」



♪♪♪

次は携帯が鳴り響く

「やっぱり出ないと・・・はい」


その声はダイスケのみならずヒロユキの耳にも届いた


『集合時間無視して何やってんの!そこにヒロがいるのは分かってるのよ!!早く降りて来なさい!!!

あと5分で降りて来ないと玄関ブチ破るからね!!!!分かった!!!!!』


この2人に怖いものはない・・・・


ただ、恐ろしい人はいる・・・・



ホンの少しの時間でも愛は育ってゆくのだ



************************************終






加依さま、聖さま、サイトのオープンおめでとうございます。
記念に(駄文ですが)贈らせて頂きます、受け取って頂けたら嬉しいな。

                       suica
大好きなサイト『えがおとおひさま』のsuica様より、
サイトオープン記念に素敵なお話を頂きました♪
ありがとうございます!!!
― 加依 ―
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